2022年7月に行われた参議院選挙の在外投票をしてきたので、その時の流れや必要な下準備、そして在外投票制度の詳細について書いていこうと思います。
最初に在外投票の資格や下準備などについてお話ししますので、すでに在外選挙人証をお持ちの方は目次から飛んでください!
在外投票ができる条件とは?
在外投票をするには、「在外選挙人名簿」というものに登録する必要があります。
外務省のサイトによると、この登録資格は下記の通りです。
1) 満18歳以上の日本国民であること
2) 海外に3か月以上継続居住していること:住所を選挙管轄している在外公館の管轄区域内に引き続き3か月以上お住まいの方。ただし、3か月未満の時期でも申請はできます。
3) 在外選挙人名簿に未登録であること。
外務省:在外選挙人名簿登録申請の流れ
在外投票の下準備
在外投票をするにはいくつかの下準備が必要です。
特に海外に渡航した後に手続きをする場合は、投票ができるようになるまで通常2〜3か月ほどかかります。
選挙が近づいてからでは遅いので注意です!
1. 日本出国する前に転出届を提出する(&在外選挙人証を申請)
日本に住んでいる間は、国内の選挙人名簿に名前が登録されています。
そしてこの国内の選挙人名簿に登録されているうちは、在外選挙人名簿に登録することはできません。
そのため、海外に長期間居住する予定で在外投票をしたい場合は、日本を出国する前に自治体に転出届を提出し、国内の選挙人名簿から名前を削除してもらう必要があります。
その後、市区町村の選挙管理委員会の窓口で在外選挙人証を申請することができます。
日本で手続きを済ませてしまえばあとはドイツで在外選挙人証を受け取るだけなので、これから渡航する方は出国前に申請しておくことをおすすめします!
ちなみに私はこの制度を知らず、渡航後この申請のためだけにフランクフルト総領事館に行くことになってしまいました…。
なお私のように渡航後に申請する場合でも、日本で転出届をすでに提出していることが条件となります。
2. 渡航後、在留届を提出する
ドイツに渡航したら、「在留届」を提出する必要があります。
これは在外選挙に限らず、海外に3か月以上滞在する場合には必ず提出しなければならないものです。
在外選挙人名簿にはこの在留届の国外住所もあわせて記載されるので、在外選挙をする上では必須です。
ちなみに私は在外選挙申請時、すでに渡航後約1年ほど経っていたのですが、在留届を提出していたつもりがしておらず…。領事館に行った際に職員の方に言われてやっと提出しました。
ですのであとからでも大丈夫だとは思いますが、これは提出が法律で義務付けられているものなので、渡航後すみやかに出すことをおすすめします。
外務省のサイトからインターネットで簡単に提出できます。
3. 在外選挙人証を申請する
渡航前に日本国内で申請をしなかった場合は、在外選挙人証の申請をしに在外公館へ行く必要があります。
この時必要な持ち物は、「在外選挙人名簿登録申請書」とパスポートです。
「在外選挙人名簿登録申請書」はこちらの外務省のサイトからもダウンロードできます。
なおこのサイトにある「申出書」は、代理人が申請するときに必要な書類ですので、本人が直接在外公館に行く場合は必要ありません。
私はこの「在外選挙人名簿登録申請書」を事前に記入して持っていったのですが、何か所か書き方を間違えていたところがあり、結局領事館で新しい紙に書き直しになってしまいました。
書き方に疑問がある箇所は、在外公館に行ってから記入すると良いと思います。
また、申請書には本籍地の記入欄もあるので、事前に調べてひかえておくと良いでしょう。
4. 在外選挙人証の交付
申請時点で管轄地域に3か月以上住んでいる場合は、在外選挙人証が届くまで2か月ほどかかります。
3か月未満の場合は、3か月が経ってから手続きが進められるため、その分時間がかかります。
フランクフルト総領事館では郵送での交付もOKだったので、そのようにしてもらいました。
私の場合はすでに3か月以上居住している状態での申請で、申請後2か月ほどで現住所確認のメールをもらい、郵送で選挙人証を受け取りました。
在外投票の2つの方法:在外公館で or 郵便投票
在外選挙人証を受け取ったら、いよいよ在外投票ができるようになります。
海外にいる場合、「1. 在外公館に行って投票する」「2. 郵便投票」の2つの方法があります。
一時帰国時などは日本国内で投票することもできますが、今回は海外にいる状態での投票に限って解説します。
1. 実際に在外公館に行って投票する
まずは、実際に在外公館に行って投票する方法です。
基本的には居住地の管轄の在外公館に行くことになりますが、投票場所が設けられている在外公館であればどこでも投票できます。
投票期間は公示日の翌日から日本国内での投票日の6日前までとされています。
この期間中は、土日含め現地時間の午前9時30分から午後5時の間投票ができます。
投票期間と投票時間は基本的に上記の通りですが、国や在外公館によって異なる場合もあります。事前に在外公館のウェブサイトなどをチェックしておくことをおすすめします。
2. 郵便投票
次に郵便投票です。
これは登録されている市区町村の選挙管理委員会に自分で直接投票用紙を郵送するというものです。
郵便投票をするためには、まず市区町村の選挙管理委員会に投票用紙を請求する必要があります。これは選挙の有無にかかわらずいつでも可能です。
投票用紙と送付に必要な封筒などが一緒に送られてくるので、選挙公示日以降に投票用紙に記入し、封筒に入れて再び市区町村の選挙管理委員会に送ります。
投票用紙請求の際と投票の際、計2回日本に書類を郵送することになるわけですが、この時の送料は自己負担です。
さらに、郵便の遅れなどによって国内の投票日までに投票用紙が到着しないというトラブルもあるそうです。
郵便投票はなかなかハードルが高そうですね…。
郵便投票のために投票用紙を請求した後でも、在外公館で投票することができます。
その場合は投票用紙と封筒類をすべて在外公館で返却する必要があります。
フランクフルト総領事館で投票してきた
私は最寄りのフランクフルト総領事館に実際に行って投票してきました。

入っているMesseTurm
総領事館というからには建物を1軒占拠しているのかと思いきや、高層ビルの中にある小さな事務所といった佇まいでした。
では当日の持ち物と流れをご紹介します。
当日必要なもの:在外選挙人証とパスポート
選挙当日必要なのは、在外選挙人証とパスポートです。
パスポートが手元にない場合は、日本の運転免許証などでもOKです。
1. 「投票用紙等請求書」と郵送用封筒に必要事項を記入する
フランクフルト総領事館では、投票所は領事館の室内をついたてで区切ったような形で設けられていました。
領事館に入るとまずは事前に投票用紙を個人で請求していないかの確認をされ、していなければ投票用紙等請求書と郵送用封筒に必要事項を記入します。
2. 投票用紙・郵送用封筒について説明を受ける
次に職員の方がいるテーブルまで行くと、まず在外選挙人証の裏の「選挙の種類」「年月日」「在外公館」の欄にゴム印を押してくれます。
私はこの欄に事前に記入しておいたほうがいいのかな…?とも思っていましたが、何も書かなくて正解でした。
その後投票用紙の記入方法や複数ある封筒の取り扱いについて説明を受けます。ここで鉛筆と消しゴムも一緒に受け取ります。
3. 投票用紙に候補者名を書いて封筒に入れる
記入用のブースで投票用紙に候補者名(比例代表では政党名でもOK)を書きます。
ブースには候補者名簿などはないので、投票しようと思っている候補者の名前をあらかじめメモしておくと良いと思います。
記入し終わったら封筒に入れます。
参議院選挙では選挙区と比例代表、衆議院選挙では小選挙区と比例代表で封筒が別なので、間違えないよう注意します。
4. 封筒の記入内容に問題がないかチェックを受ける
終わったら再び職員の方のところに持っていき、封筒の記入内容に間違いがないかチェックをしてもらいます。
問題なければこれで終了です。
2022年7月の参院選、実際の在外投票率は2%?
今回行われた2022年7月の参議院選挙の投票率は、52.05%でした。
一方在外選挙の投票率はというと、比例代表で22.04%、選挙区で21.91%となっています。
意外と高いかも?と思いきや、この分母は18歳以上の海外在住者…というわけではなく、在外選挙人名簿に載っている人の数です。
総務省によると2021年10月時点での海外在住者数は134万4,900人で、総人口の割合を参考に子どもを除くと、18歳以上は115万人ほどと推計されます。
一方この中で在外選挙人証を持っている人は投票日時点で9万9,356人です。
つまり、そもそも18歳以上の海外在住者のうち在外選挙人証を持っている人は1割にも満たず、それを考えると実際の在外投票率は2%ほどということになります。
かなり低いですが、もろもろの事情を考慮すると無理もないかなと思います。
行きたくても在外公館が遠いなどで行けない人もいるでしょうし、「海外にいるし日本の選挙はいいか」という人も多いと思います。
私個人としてはオンライン投票の実現に期待しつつ、それまでは領事館に出向いて投票しようと思っています。
なお2022年8月現在、コロナ禍での特例措置としてフランクフルト総領事館では、遠方に住んでいる方などは申請にあたって直接来館しなくても良いということになっています。
この場合は必要書類の郵送またはメール添付、そしてビデオ通話を通じて本人確認や書類の確認が行われます。